そんな状態の中で、寝れるわけもなく……


「桜……寝ちゃった?」

「…………」

「………寝ちゃったんだ」


寝れるわけがない……のに、そう聞いてきた雪の言葉に応える事ができなかった。


早くなっちゃいそうな息を頑張って整えて、寝ているような素振りをする。


枕元にある目覚まし時計の音が、心臓にまで響いてきた。



雪は、本当に寝ちゃったと思ったのか何も聞かないまま……だったけど、いきなりモソッ…と起き上がった。



雪の指先が私の前髪に触れた。


予期せぬ行動に、ビクッ……と動きそうになった体を無理やり押さえつけた。


前髪に触れた手は、頭をなでるように何度も往復したり、時々イタズラに鼻をつまんだり。


息が出来なくて苦しくなると、雪は手を放してクスクスと笑うのが分かった。





「桜……、かわいい」



普段から言われなれている言葉なのに、なんだか恥ずかしくてたまらない。


ここが暗闇でよかった……心からそう思った。