「ん~…、いいの?」


「うんっ、私はちょっと用事があるから」


「う~ん…、じゃあ行って来る」


「いってらっしゃぁい」



雪は、ちょっと困ったような顔をしながらも



待っている友達のほうへ向かっていった。



用事があるっていうのは、真っ赤な嘘だし。



昼休み……、特にする事もないし…。



雪と付き合う前までは、昼休みはあの桜の木の所で読書してたもんね。



「ふぅ…、今日は久しぶりに本読も…」




目の前にある、からっぽになったお弁当箱をバックの中にいれ



机の中からケータイ小説の文庫本を取り出した。




本には、しっかりとカバーがかかっている。



前までは、普通の純文学の本とかを読んでいたのだけど



本屋で偶然見つけたこの小説に一目ぼれした。



恋愛とは縁がなかった私の、恋の教科書……。


そんな事、人に知られたくないから…




―――ガタッ…


もう散ってしまったであろう、桜の木の元へ向かって歩き出した。




この先にまち受けるものなんて、知りもせずに………。