てっきり、真面目な顔をしてると思っていた雪の表情は
予想とは全く正反対ににこやか………というか
少し笑いを我慢しているように見えた。
振られると思って覚悟して緊張していたけど
雪の顔を見た瞬間、一気に緊張が解けた。
止まっていた心臓が、再び動き出すように、私の中で止まっていた時間が動き出した瞬間だった。
「ってか、さくら!どうしたのっ?」
私の潤んだ瞳に気付いた雪。
まさか自分が泣かしたなんて思っていないから………。
こんな所も鈍感。
「なんでもないよ~」なんて言って、涙の理由をはぐらかした。
雪は、特に気にしてもいなかったのか、あまり知ろうと思っていないのか「ふーん」と言って、笑った。
そんなこんなで私たちは、さっきまでの事が嘘だったようにニコニコして話し始めた。
だけど………
「あのさ、その………話なんだけど……」
いきなり真顔になった雪の口から発せられた言葉のせいで
やっと和んできたかと思われた空間に、再び緊張が走った。
そう……、そうだった。
雪は、私に話があってここに呼び出したんだった。
雪の表情から、振られる事はないと思いながらも、鼓動が早くなる。



