「………さくら」 この日一番とも思えるような強い風が、桜の木を揺らし 花びらが一斉に散った時、今まで黙っていた雪の口が開いた。 私は、これから言われる事を聞く勇気がなくて、両手で耳を塞ぎたかった。 だけど、もう、これ以上逃げたくなかったから……。 私は、俯いていた顔を上げ、ゆっくりと雪の顔を見た。 ―――え?