桜の木の前で、雪は私に背を向けたまま黙ってジッとしていた。
雪の雰囲気は、この綺麗に咲く桜とは、とても釣り合わないほど、冷たかった。
その冷たさから、雪の真剣さが伝わってきた。
だから、私………振られちゃうのかも。
私は、雪が何をしたって嫌いになれないよ。
別れたくなんかない。
そんな思いばかりが先走って、目に涙がにじんできた。
最初から不安だった。
恋ちゃんが、雪の事を好きだって聞いた時から………。
恋ちゃんに惹かれちゃうんじゃないかって。
私なんかより、恋ちゃんを好きになるんじゃないかって。
雪は、私のどこが好きだとか言ってくれなかったから………。
だから、ずっと私なんかのどこが好きなのか分からなかった。
雪は……もう……………。



