雪は「着いてきて」とだけ言うと、スタスタと何処かへ歩き始めた。
さっき雄也くんと通った廊下を雪に遅れないようにと、小走りで付いていく。
雪の歩くペースがいつもより早い。
そのせいで、私と雪の間にはだんだんと距離が出来てきてしまった。
“まって”
いつもいえないその言葉。
口から出てくれないその一言。
好きだから、困らせたくない。
好きだから、嫌がられたくない。
好きだから、自分の意見がいえない。
そう言って、結局私は逃げているの。
この付けがあとからやってくるのを、頭の隅では分かっているのに……………。



