後ろから、また誰かの声がしてきた。
少し高めだけど、優しい声。
私を落ち着かせてくれるあの声。
私の名前を呼んでくれるあの声………。
「雪…」
雄也くんが低く唸るように雪の名前を呼んだ。
振り向くと、昨日からずっと私の頭の中を占領している雪がいた。
いつものように笑っているけど、その笑顔はどことなく引き攣っている。
やっぱり何かあったんだ………。
「おはよ、雪」
「あのさ、桜。ちょっといい?」
気まずそうな雪の瞳には、小さな私が映っている。
「わかった……雄也くんは先に教室に行ってて?」
雄也くんは、行かせたくないようだったけど、渋々了解したようで、小さく頷いた。



