「はっ、はなれてよっ!」
あたしは精一杯の力を込めて棗の体を押す。
「ヤーダ、離れない」
そんなあたしに反して、棗は力強く抱きしめる。
何で!?
ていうか、棗もいい匂いするよね。
って、あたしも同じじゃん!
「かなでー」
すんすん、と匂いを嗅ぐ棗。
「いっ、いいかげんにっ……」
誰かこいつを止めてー!
そんな思いも虚しく、抱きしめられたまま。
あたしはその時間を過ごした。
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