あたしの要望だけ聞いたって楽しくないでしょ?
「俺が行きたいとこ?んー、そうだなぁ……奏の家とか?」
「は、っえ?」
あたしの、家?
それじゃ、待ち合わせした意味が……。
「1回も行ったことないんだよなー、俺。奏の家行きてぇな」
うーん、別にいいかなぁ……。
お母さんとお父さんは今仕事でいないし。
「分かった、行こ」
今度はあたしが棗の手をギュッと握る。
「マジで?やった」
小さくそう呟いた棗に、あたしの胸は少しだけ温かくなった。
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