「……棗」
「……ハイ」
許しを乞うような表情で見られる。
「ごめん、そんなことさせて」
「えっ……」
「あたしのためにバイト何個も掛け持ちさせて頑張ってくれてたんだよね?」
それなのにあたしは、何も気づくことができずに。
何度も遅刻してくることに苛立ってばかりで。
普通は、自分のことを分かってくれない彼女なんか嫌いになるよ。
どれだけお人好しなの、棗。
「本当にごめんね……そしてありがとう」
「謝んなよ、俺がしたくてしたわけだし」
ニッと笑ったあと、棗はあたしの頭をポンポンと撫でる。
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