あの後、泣き止んだサヤに家まで送るように言うと、何も言わずただ首を横に振った。
だけどそれでも心配だった俺は「じゃあ途中まで…」と念を押したけど、サヤはやっぱり首を横に振って…
「一人で帰れるから…」
そう言うと背を向けてとぼとぼと帰っていった。
そんなサヤの後ろ姿を追いかけることすらできない。
俺と目も合わさず笑顔の消えたサヤを見て、一瞬記憶が戻ったんじゃないかと思ってしまったから…。
“いつどんなふうにして戻るかなんて誰にも分からない”
先生の言葉がふと甦る。
さっきのショックで記憶が戻ったとしてもおかしくないんだ。
そう思うと急に怖くなった。
いつサヤの記憶が戻るか分からない。
いつ俺の存在を忘れてしまうか分からない。


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