「おまえさえいなければな…」
「………」
淡々と発せられる言葉にイラッとする。
「おまえが彩耶に近付いてなかったら俺だってこんなことしてねーんだよ!」
胸ぐらを掴んだままの俺の拳を乱暴に払いのけた。
そして殴られたときに切れた口元をぐっと拭うと立ち上がった。
「う…ひっ……ひっく…」
膝を抱え泣き続けるサヤを見ながら、俺に言い聞かせるように吐き捨てた。
「俺は絶対に彩耶の記憶を取り戻してみせる」
「………」
もう一発殴ってやろうかと思った。
だけど俺が立ち上がる間もなく奴は部屋を出て行った。
「………」
「…うっ……ぐすっ…」
静まり返った部屋にはサヤのすすり泣く声だけが聞こえている。


![Dear HERO[実話]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.797/img/book/genre3.png)