「戻ったら今の記憶は必要ないものになってしまう。そのまま残っていたらサヤちゃんの頭が混乱し兼ねない。
だからサヤちゃんが戻る時は今の記憶と引き換えになる確率が高いということを覚えておいてほしい。
君には辛いかもしれない…」
「……ふっ…」
「……?」
そっか…俺、忘れられるんだ。
ショックを通り越して笑いがこみ上げてきた。
俺がどれだけサヤの笑顔を忘れられなくても、あいつは俺の存在自体を忘れてしまうんだな。
顔を引きつらせながら窓の外に目をやる。
雨のせいもあっていつのまにか空は真っ暗だった。
「悪かったね…長い時間付き合わせてしまって…」
「……いえ…」
横から先生の視線を感じる。
だけど俺はそのまま窓に目を向け、何も見えない真っ暗な世界を見続けた。


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