「そろそろ時間じゃない?」
ようやく解放されて、ベンチに横並びに座った。
「ん?
なんの?」
「花火!
今日と明日だけ、上がるんだよ」
「へぇー、知らなかった…」
どれだけ興味がないのよ…
私がこの日を、どれだけ楽しみにしてたか、わからないんだろうなぁ…
ヒューーーー…
ババ〜ン!!
夏に見る花火とは違って、空気が澄んでいるからより輝いて見える。
まさか、この花火を智哉と一緒に見られるなんて…
一人感慨深いものを感じて鼻の奥がキュっとなる。
急に、手を握る力が強くなり、智哉を見ると
吸い込まれそうな瞳で真っ直ぐ私を見ていた…
ゆっくり、ゆっくり顔が近付いて…
おデコが… くっついた。
「知里…、泣かない?」
不安そうな声…
「えっ、なんで?」
花火みてるだけだから、泣かないよ…?
「キスするから…」
ここで?!
周りに人がいるよ?!
キョロキョロ見渡すと、みんな花火に夢中で…
恋人との世界にどっぷり。
誰も気にしている様子がない…
両手で、顔を挟まれて
「ジッとして…
泣かないでね…」
優しい言葉に息をのんだ…
唇が重なる…
触れた瞬間は、ヒヤッとしたけれど
それはすぐに暖かくなり、私の唇を溶かしていく…
優しい優しいキスだった…


