もうすぐ花火が始まるのに、どうしてこんなところに。
「ここに座ろう」
やっと振り返った柊の顔がいつもの表情に戻っている。
落ち着いたんだろうか、握る手も、もう痛くない。
誰もいないこの場所は一体なんなんだろうと思いながら、石段に腰掛ける。
「ここいいでしょ。ちょっと遠いけど、花火もバッチリ見えるし、誰もいないし」
隣に座った柊が楽しそうにそう話す。
今日の日のために見つけてくれたのかなと思ったら胸が痛くなる。本当に柊は優しい。
「ごめんね」
「ん?何が??」
「柊四人で回るの嫌だったんでしょ?あたしが勝手に二人誘っちゃって…本当ごめん」
「え??俺嫌そうに見えた?夕顔賑やかなの好きって知ってるし、別に嫌じゃなかったよ」
「嘘!怒ってたじゃん」
「え?怒ってないって。焦ってただけだよ。花火までにどうやって二人になろうって。どうしても花火は二人で見たかったし――いや…本当はちょっと怒ってたかも」
「……」
夜風が気持ちいいくらに吹いて、前髪が揺れる。
正面に見える海に映る月を眺めながら、柊と二人っきりと思うとドキドキしてくる。
