そこが彼の長所でもあり、同時に短所でもある。

本当に誰にでも優しい彼は、何の誘いでも断らない。

そこに柊目当ての女の子がいようと呼ばれれば行くし、バレンタインに彼女以外からも平気でチョコを貰う。

その度そのとき付き合っている彼女に怒られている所を何度も目撃した。

柊が誰の誘いも断らないということが広まって、今まで見ているだけだった子も次々彼に告白するようになった。


誰にでも同じなんだったら彼女になる必要があるんだろうかと常々思うが、“柊の彼女”ということに意味があるんだろうとも思う。

でも―――本当に優しいとはそんなことじゃない。彼は女の子だけじゃなくて、


「大丈夫ですか?持ちますよ」

老若男女、困っている人がいたら体がすっと動いてしまうほど素敵な人なのだ。

「ありがとう、助かったわ」

ゴミを持った腰の悪そうなお婆さんを見て、すかさず声をかける彼にときめかない人がいるんだろうかと本気で思う。