「生意気なガキだね。茄子も食えないくせしてさ。」


ママ。


茄子は関係ないと思うんだけど。


突っ込みを入れる気力もないので、敢えて黙っておく。


「何あんた。それで拗ねてんの?」


「……拗ねてなんかないよ。」


「あんた、本っ当に昔から洸ちゃん大好きだもんね~。」


ママは、ニヤニヤしてあたしを見る。


「何それ。ママまでやめてよ。
洸ちゃんは、幼馴染みとして大好きなのっ。そういうんじゃないもん……。」


「ふーん?」



そうだもん。


洸ちゃんはそういうんじゃないもん。


あたしが今悲しいのは、幼馴染みの洸ちゃんがいなくなってしまったから。


洸ちゃんが、白田さんと居るのを見てモヤモヤするのは、きっとあたしが洸ちゃんと居たいから。


ただ、それだけ。


きっとそれだけだもん……。



「美晴。おいで。浴衣着せてあげる。もうすぐ待ち合わせでしょ?」


「……うん。」


あたしは、重たい腰を上げる。