千里ごめんね。


バスが来てるなんて嘘なの。



心の中で千里に謝りながら、あたしはバス停のベンチに腰を掛ける。


「ふぅ……。」



相変わらずこっちは随分と蒸し暑いな。



汗が頬を伝うのを感じる。



あと20分はバスを待たなきゃいけないのか。


ちょっと一眠り出来るかな?


最近まともに寝られなかったからなぁ。


今になって眠気が襲って来てる……。



さっきまで煩かった蝉の鳴き声が、徐々に遠退いていく。



少しだけ……少しだけ……



――――――――チリンチリン!


「キャハハハハ!」



あたしは、手放しそうになった意識を取り戻す。


目の前を自転車に二人乗りをした学生カップルが楽しそうに通り過ぎて行く。


その後ろから、いつかの自分の思い出が付いていく。








「…………洸ちゃん………」