図書室


今日は、吉沢先輩の当番の日。


それに返却日だったので、本を返しに
来た。


「あの、この本返却に来たんですけど」


声を聞いて、顔を上げた先輩は眼鏡を
していた。


思わず、ドキッとした。


「あっ、こないだの。

えっと、一年生かな」


「はい、覚えててくれたんですか」


覚えててくれたなら、凄く嬉しい。


「うん。
だって、とれないものを頑張って
取ろうとしてる姿みてたら、何だか、
弟を見てるようで」



私が小さすぎると言われてるようで、
ちょっと頬を膨らませた。



「ごめん、そんなに怒らないで。

つい、可愛くて少しの間見てたんだけど、
取れそうになかったから」


「いつから、見てたんですか」


「一分近く四苦八苦してる所をね。
近くで本の整理していたら、面白いものが見れたよ」


「先輩、からかってませんか」


「そんなことないよ。
ただ、可愛いなぁと思っただけ」



吉沢先輩に可愛いって言われた。



「その本返却するんだよね。
どうだった」


私は、本を渡した。


「私、あんまり読むのとか得意ではないんですけど、これは読みやすかったです」


「それは、良かった」


「あの、今日は眼鏡、何ですね」

「うん、あっ、これ、
半分伊達なんだよ」


「えっ」


「右は2.0あるのに、
左は、0.3しかないんだ」

「そうなんですか」



吉沢先輩の事、ちょっと知れた。



「カード出して」


その後、本を返した。



「あの、私にお勧めな本って
ありますか」

「そうだね……、イタッ、ちょっと、
宮原先輩、痛いですよ」


三年生らしき人が来て、吉沢先輩の頭を
持っていた本で軽く叩いた。


「お前ら、うるさい、静かにしろ。

吉沢、うるさいって苦情来たぞ」


「先輩、すいません。

でも、本で頭叩くのは痛いです」



私のせいで吉沢先輩怒られちゃった。



「あっ、そうだ。
この子にお勧めの本、紹介したいので
ちょっと行ってきていいですか」

「はぁー、早くしろよ」

「はーい、此方来て」




        移動中



「吉沢先輩、すいません。
私のせいで怒られちゃいましたね」

「気にしなくていいよ。
本で叩かれるの慣れたし、いつもの事
だから」


でも……。


「此処、えっと……、あった。
これ、杉田さんにお勧め」


「えっ、何で、私の名前」


「さっき、カード見たから」


そっか、それで、名前を。


「この本、僕のお気に入りなんだ。

切ないラブストーリー。

泣きたいときに読むんだ。

そうすると何か、泣いてスッキリするんだよね」


「吉沢先輩が泣きたいときあるんですか」


「そりゃ、沢山あるよ」


その言葉を発した後の笑顔は
とても寂しそうだった。


何か、その前まで話していた、
吉沢先輩とは、雰囲気が全く違った。


もっと、吉沢先輩の事が知りたくなった。