左手を拳にして、
スマホを切る。
…戻っちゃいけない。
氷薇は、
私がいてはいけない場所だった。
「…ねぇ。」
ん?
「…はい。」
「…葵葉ちゃんって呼んでいい?」
「…いいよ。」
「私ね、香澄(かすみ)って言うの。
よろしく。」
あ…
苗字言わなかった…
やさしいな、香澄は。
「…よろしく、香澄。」
よろしく、って言われて、
素直によろしく、っていう
予定はなかったんだけど…
香澄だけ…
打ち解け和え(あえ)たらいいな。
…てか、こんなにも優しくて可愛いのに、
周りが香澄を避けてるのが、嫌という程
伝わって来る。



