そのころ何も知らずに留守番をしていたわたしは、のんきにテレビを観ながらお菓子を食べていた。


プルルルル、プルルルル……


そこに電話がかかってきた。

携帯の画面にはお母さんの携帯の番号が表示されている。

買い物でもしてから帰ってくるのかなー、わたしは応答をタップした。

「もしもし」

でも、わたしの耳に聞こえてきたのは、わたしの知っているお母さんの声ではなかった。

ずっしりと響く男の人の声。

お父さんでもない。

「どなたですか?」とわたしが言うまえに男の人が先に言葉を発した。

「桐生芽依さんでよろしいでしょうか?」

「……」

わたしは何も答えない。

知らない人に急に名前を聞かれて、

それも顔の見えない電話で、

しかも、いかにも怪しそうな重い男の人の声に…