「おっはよー」
ちょうど学校の玄関に入ると、架恋に会った。
「あっ琉聖くん!おっは…えっ⁉︎」
架恋の声に驚いて、わたしも蒼石くんを見ると…
「えっ⁉︎」
架恋同様、すごく驚いてしまった。
だって、蒼石くんの下駄箱からすっごい数の手紙が雪崩のように落ちてきてたから。
こんなの漫画の世界だけだと思ってた…
まだ転入1日目であんな数の手紙。
この人何者?
でも蒼石くんは、これが普通かのように真顔で手紙を拾っている。
「琉聖くんその手紙!」
「ああ、落ちてきた」
蒼石くんよりも架恋が興奮している。
「そんな数下駄箱に入るもんなんだね〜、すごいわ〜」
ん?
架恋はそっちなんだ…。
蒼石くんがモテるとかじゃなくて、下駄箱なんだ。
なんとか全部拾って教室に入ると、なぜかそれを早乙女くんの席に置き、早乙女くん、蒼石くん、架恋、わたしの四人で開き始めた。
「うわー全部知らない人だわー」
「そりゃそうだろね、だって転入してきて1日しか経ってないし」
そんな話をしながらどんどん手紙を開けていく。
「あっ…今更だけど、わたしたちがこれ見ていいの?」
本当に今更だけど、思った。
「あー…家に帰っても読まないし」
「でも、これ1人で読んでくださいとか書いてあるのもあるよ?なんか手紙書いた子かわいそうじゃない?」
「本当だね〜、それにうちらが恨まれる可能性だってあるしね〜…」
わたしが言うと、架恋も頷きながら言う。
「別にいいじゃん、俺がいいって言ってんだし。別に恨まれてもいいし。」
「いやいやいや…あんたが良くてもわたしたちは良くない。大体告白する女の子の気持ち考えたことあるの?」
「考えたことなんかねーよ。俺、女じゃねーし」
「はあ?そんなこと関係ないでしょ!告白する女の子がどんな気持ちで手紙書いたと思ってんの⁉︎確かにわたしだって分からないけど、想像くらいしてみなさいよ」
「別にそんなことしても意味ない」
あーー頭にくる!
ほんとこいつどんな神経してんの?
「まあまあ、やめなよ二人とも。」
早乙女くんが苦笑いしながら止めに入る。
「俺は、桐生さんが正しいとは思う。確かに琉聖宛てなんだし、俺たちが読むのは良くないかな。」
「あーーーすいませんでした(棒)」
「琉聖くん完全に棒読みだ…」
なんなのこいつ!
早乙女くんが言ったら謝るんだったら、わたしが言った時も棒読みでもいいから謝ってほしかったわ。
「と、いうことであとは琉聖が読みなよ。はい、みんな解散!」
早乙女くんが言うと、蒼石は手紙をガサッっと乱暴に持って帰っていった。
解散って言っても、わたし、架恋、早乙女くんは席が近いから普通に話せる距離にいる。
「あっ、桐生さん」
「はい」
早乙女くんに呼ばれて、横を向く。
「これから芽依でいい?」
「ん?」
ちょっと何言ってるのかがすぐに分からない。
「だから、これから芽依って呼んでもいい?俺も環輝でいいから」
「あぁ…」
正直ちょっと迷った。
というかかなり迷った。
男子に名前で呼ばれるのなんて、琉聖だけだったし、
男子を名前で呼ぶのも琉聖だけだったから。
でも、良い人そうだし仲良くしてくれてるからね。
「うん、いいよ」
「サンキュ」
そう言って早乙女くんはニコっと笑った。