たちまち炎が私と名も知れぬこの人の体を包み込み、二人は再び生卵の浴槽内にダイブした。
………ジュウウゥゥゥゥゥ………
焼ける。焼ける。どんどんたんぱく質の焦げていく臭いが辺り一面にひろがり、灰色の煙が小さな窓から漏れだしていく。
言葉になっていない二人の声が響き渡ると同時にどんどん炎は勢いを増して、浴槽から洗面所へ、そしてトイレへ、さらに家中へとひろがっていった。
卵は量があるぶん焼けるのに時間がかかるらしいけれど、私と名も知れぬこの人と一緒に炎に包まれて固まっていくのが分かる。
味付けは………
私と名も知れぬこの人の………
快楽と悲鳴と涙で………
隠し味には………
少なくとも二人の人生において、純粋な愛など存在しなかったという、苦い苦い皮肉を込めて………
終身。
▼fin
