『私ね、妊娠しない体なんだよ』



 名も知れぬこの人は何も言わず、しかし同情の眼差しを向けて頭をナデナデしてくれながら、大きな肉棒を私の中で出し挿れする。

 二人の吐息が密室された生卵の浴槽内でコダマしている。

 ピチャピチャ………

 ぬちゃぬちゃ………

 イヤらしい音が速度を増す度に、私の中の奥のほうが刺激されて、そのたまらない快感に激しく喘いでしまった。

 『事』が済むと、二人は生ぬるくなっている浴槽内でグッタリ抱き合っていた。

 余韻に浸りながらボーッとしていたら、この混ざりあった卵と私たちをオムレツにしたら美味しくなるだろうか?という可笑しな興味がわいてきたため、おもむろに立ち上がった。

 名も知れぬこの人が寝室の物置に灯油があることを教えてくれたから、それを抱えて持ってきた私は、全身にソレを浴びた。

 名も知れぬこの人も、私のマネをして一言も喋ることなく灯油を頭から自分でかぶる。

 使い古されたジッポーに、名も知れぬこの人は火を灯した。



 ───ボワッ………