二人が並べた薬の横に 
黎子と令子が 薬の全てを
呑み尽くしたあと
最後に口に入れようと
約束していた
小さい釘と
希硫酸の瓶が 
未使用のまま残されていた。

「使い道 なかったなぁ。。。。」
そんな 呟きを 声にしたとき、
首筋に令子の吐息を感じた。

「ねえ、これ
下に落としちゃおう。。」
令子の声は たしかに聴こえた。
振り向く後ろには 横たわる令子の姿しか
見つけられなかったのに、
釘も希硫酸も 窓の外を飛んでいた。

目の前の国道は
徐々に騒がしくなっていた。
逃げ惑う虫に姿を変えた群集へ、
ガードレールを破砕して お腹をみせる
タンクローリーから発せられた炎が
襲い掛かっていた。