ーガチャ





あ、誰か来た。





まぁ、普通に帰ればいっか…………





って、全然良くないー!





「え?先輩?ここ知ってたんですか?」





「ま、まぁね…」





けじめをつける。けじめをつける。けじめをつける。よしっ!





「朔っ!ものすごく突然なんだけど…」





「はい?」





「最近気づいたんだけど……その、私…さ、朔のこと…!「それ以上言わないでください」





好きって言おうとしたら、あっけなく遮られた。





「あ、ご、ごめん!嫌だよね。彼女いるんだし…じゃ、私はこれで…」





朔に背を向けて歩きだしたのに、私はその場で抱きしめられてた。





誰かなんてこの場所に1人しかいなくて。





紛れもなく、それは朔で…





「な、なにしてんのっ!」





あまりにも力が強くて抜け出せなかった。





「彼女いるのになにし「先輩は勘違いしてます!」…は?何を?」





私は勘違いしてないはずだよ?





「なんで、俺に彼女いるって思ったんですか?」





「それ、は…」





「昨日、あの場にいたんですね?」





朔の言うあの場とは告白現場のことだろう。





「ごめん…」





「ちゃんと、最後まで聞きました?」





そんなのできるわけない。





朔のことを好きとわかってすぐに告られてたんだから。





「そんなことできないよ…!」




「だから勘違いしてるんですよ」





「どうして!?私、ちゃんと聞いたもん。朔の声で『ありがとう。俺も好きだよ』って言ったのを!」





だから私はあの場から逃げ出した。





私の気持ちなんて知らずに抱きしめてきて…





「人の気持ち考えてよっ!」





「それは、俺のセリフです!」





「へっ…?」





「確かに好きだよとは言いました。でも、そのあとにちゃんと断ったんです。俺の好きは川山の好きとは違うし、好きな人がいるからって…俺はまりあ先輩が好きだからって…!」





…………まりあ先輩とは私のこと。朔の好きな人は、私っ!?





「な、なんの冗談?ありがたいけどさー…」





「本気です。冗談でもなければ罰ゲームでもありません。正真正銘、俺が好きなのは先輩です!」





「ま、待って!わ、私?こんな私なんかのことが好きなの?」





「だから、そうですってばー」





思考停止してるんだけど…?





私は朔が好き。朔も私が好き…うん。わかったよ…いや、わかったけどさーぁ!





「なんで私のことを?いつから?」





「俺が初めて先輩に声かけた時のこと覚えてますか?」





あー、あの時か。





「覚えてる」





「俺、最初は1年だと思ったんです」





「うん。知ってる。3年って聞いて驚いてたし、指で1ってやってたから」





あの日のことは忘れたくても忘れられない。





だって、朔の第一印象が生意気だって決まった時だから…





「最初はただ可愛い人だと思ってました。だけど、先輩が部活を終えて友だちと笑顔で帰ってく姿をいつの間にか目で追ってたんです」





「ごめん。生意気な奴だなぁとしか思ってなくて気づかなかった」





「知ってますよ。俺は先輩の眼中には少しも入ってないだろうって思ってましたから。だから、毎日毎日馴れ馴れしく先輩に話しかけて少しでも俺のこと覚えててもらおうと思ってたんです。けど、先輩には好きな人がいた。いて当たり前かもしれません。だけど、先輩があの人の本性を知る前からあの人の本性を知ってたんです」





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ーおい、まりあに話しかけまくってるけど、お前も遊びだろ?





ー違います。俺は本気です!





ーはぁ?まじかよw





ーまりあ先輩をあなたの暇つぶしに使わないでください





ーあ?年下が生意気言うなよ





ー生意気なことぐらい知ってます。
けれど、先輩は物じゃないですから





ーふっ…本気の恋なんてめんどくさいもんだ。お前もそのうち遊びに変わるよ



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彼が私にこのことを言えなかったのは、私が柊哉を好きって知ってたからだと思う。





これは、朔が私に対して言えなかった、優しい隠し事だったのだ。





「先輩。俺は年下です。それでもいいなら、俺と付き合ってください…!」





そんなの答えは1つしかないよ…





「はいっ…!」





綺麗な夕焼け空の下、私と朔は結ばれた。