もうすぐ家に着く。

そしたら多分彼のペースに飲み込まれてしまうから、言うなら今しかなかった。




「わがままを言います」

「お、おう」

「好きです」

「……」

「他の先生や親に怒られても一緒にいたい。……ずっと一緒にいたいって思うわ」




真顔で言った。

すべて忘れたフリをした、敬語のときのようなトーンで。何とも思ってないような口調で。



彼も真面目な顔で聴いていたけれど、ふ、と力が抜けたように笑った。




「嬉しい」




俺もだ、と聴くと、私だって頬が緩んでしまう。

















保健室にはもう秘密がない。


寝かせてもらえない夜の果てで、

保健室の眠り姫は体育教師の

機嫌のいい鼻唄を夢で聴く。




≪ end ≫













(次ページにて後書き)