生命が羽ばたくとき

特に話すこともなく、私はバイト先のパン屋の近くで立ち止まった。



「それじゃあ、また」



「おう、きぃつけろよ」



私と光輝はお互いに手を挙げて、別れを告げた。



カランコロンと、鈴の音。



「こんにちは、バイトの有賀です」



扉を開くと、そこには甘いパンの匂い。



「いらっしゃい、有賀さん。そこから入って更衣室で着替えてね」



パン屋のおばさん、もとい、夏川さんはパンを焼きながら私に言った。



私は指示通りに更衣室に向かい、お店指定の制服に着替えエプロンをつけた。