「彼方は…彼女でした。別れて、自分にケジメをつけられないまま、転校してしまったんです。」
恥ずかしかった。胸を張って「彼女です」と言えないことが。
「転校ね。ふーん」
お姉さんはクスクス笑った。
「あたし、雫山璃子(しずくやまりこ)。彼方の姉よ。あなたは?」
「真田、雅治(さなざまさはる)です。西宮中学2年です」
彼方の姉、か。彼方は今どこに居るのだろうか。きっちり、別れを言いたい。僕の何がいけなかったのか、彼方に聞きたい。
「彼方は今、何処に住んでいるのですか。」
璃子さんは、暫くの間黙ってて、1度鼻をすすってからメモを渡された。
「LINEのID。準備ができたら、話す。」
顔を見せないようにして、行ってしまった。
僕は暫くボーゼンとしていたけど、我に返ってLINEにIDを打ちこんだ。

RIKO ありがとう

画面に現れた璃子さんのアカウント。ホームのプリクラに写っているのは、璃子さんと彼方。
瞳が不自然に拡大され、2人とも可笑しな事になっている。