Silbern wolf




佐久良愛地(サクラ アイチ)side



「聞いてねぇっすよ、楠木さん。」



副総長候補の楢崎岳(ナラザキ ガク)は、口角をピクピクさせていう。


現総長の楠木優真(クスノキ ユウマ)さんは、そうだよな、と眉を八字にして苦笑いを浮かべる。


そして、改めていう。


隣にいる黒髪の美少年の背中を押して、



「こいつ、次の総長だから。」



目を細めた美少年の彼。


そして、形のいい口を開いた。



「……なにそれ。聞いてねぇ」


「いってねぇもん。」



その口から出た声は、イケメンボイス……イケボというやつで、男の俺でも聞き惚れてしまいそうになるくらい、いい声だ。



モテるだろうな。



「ま、待って下さいよ!!愛地が総長じゃないんですか?!下のやつらだって、納得しませんよ!!」



そう、俺を指差して叫ぶのは、小林大志(コバヤシ タイシ)だ。


俺は総長じゃなくてもいいんだけどな。


なにより、本能が、



この人についていきたいと言っている。