────とあるマンションの一室。
─カタカタカタカタカタカタカタカタ
カーテンの閉めきった暗い部屋に響くパソコンのキーの音。
黒いパーカーのフードを被る少年は、ただひたすらにキーを打っていく。
途中、何を思ったのかチラリ、とつけっぱなしのテレビに目を向けた。
『十一年前にまだ未解決の事件で亡くなった、桐生流(キリュウ ナガレ)さんの妻桐生沙織(キリュウサオリ)さんと息子の桐生結斗(キリュウ ユイト)くんが行方不明になり、今日で十年となりました。未だ行方は分からずしまいのようです。警察は今後も捜索を続け、共に事件の解決を試みているようで────』
暫く眺めていた少年は、テレビを消した。
「……胸くそわりぃ」
チッと舌打ちをした少年は、ドサッとベッドに倒れこむ。
ふと、棚の上に置いてある写真たてが目に入る。
「……あいつか」
余計なことしやがって、と苛立ちが募る。
その写真には、笑顔で写る優しそうな青年と、その青年の隣で嬉しそうな笑顔を浮かべるまだ小さい少年が写っていた。
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