ゆーとゆーま

 四限終了のチャイムが鳴ってすぐ、美依に捕獲されて財布とケータイだけ持って食堂に行って……で、もう混んでいた。注文の列が食堂からはみ出て、けっこう日差しがきつい。

 でも列が進むのは早く、なぜかと思ったら前方から聞こえるメニューはほぼ同じだった。鶏竜田。持ち帰りでパックに入れてもらう人もそれっぽい物ばかり。そういえば一年生の時、ゆーまがあんなのを食べていたかもしれない。順番が近付くとお手本のために美依が先に注文した。


 トリタッタハンライスアンドン。


 あれだ、コーヒーショップの呪文みたいな注文。凄くあれっぽい。どういう意味かは分からない。

 同じので、とすかさず首を伸ばして注文を済ませると手際よく、というより元から準備されていたのだろう丼ぶりがカウンターに置かれた。控えめに盛られたごはんを覆い隠すように竜田揚げが乗って、茶色いあんがかかっている。300円也。

 窓際に席があったので二人で向い合せに座り、美依が外の自販機に二人分の飲み物を買いに行っている間、由布はやっぱりケータイを弄っていた。


TO:ゆー  今日のお昼ご飯は?
TO:ゆーま 鶏竜田なう。

 ぼっちでコンビニごはんの由布がなんと食堂デビューだ。ゆーまからの返信は簡単に予想できた。珍しい、とかそんなのだろう。しかし由布はそれをすぐに確認できなかった。

 後ろからケータイを取られたからだった。