由布は特に考える必要もなく――おかげでゆーまのことばかり頭を占めていられた――その中から一つ二つハンガーを取り出して着て、髪を軽くタオルで拭いただけで準備を終えた。向かうは、ゆーまの部屋。あの寝ぼすけは今もたぶん寝てて、由布を待っている。

 出かけようとスニーカー風のパンプスを履きかけ、おっと、呼び鈴が鳴る。フラワー便でーす。

 ……フラワー便?


 ゆーは来年もまた忘れそうだね?
 何それひっどーい。
 現にもらってから『そうだ、スズラン買わなきゃ!』って思い出したんじゃん。
 む、それなら今から来年のフラワー便予約するし。直接ゆーまの家に届くようにするから。
 じゃー僕もそうしよう。


 急ぎすぎて足がもつれた。

 ちゃんと履いてなんかいられなくてパンプスのかかとを潰した。玄関のドアを開けようとして金属がぶつかる音がする。先ほど、自分で鍵をかけたのを忘れていたんだった。縦になっていたつまみを横に戻すのももどかしい。

 そして由布は、ドアを勢いよく開け放った。