「あー、話してただけですよ。んじゃ……ばいばい」
隼人が来たことで諦めたのか、男の人はヒラヒラと手を振りながら足速に去っていった。
「は――…、何やってんの」
「だ、だって…隼人が遅かったから。………それよりさ、隼人?」
「ん――――…」
「そろそろ離してくれても、大丈夫だよ?」
そう、私はまだ隼人の胸の中にいるの。
いくら人通りが少ないとはいえ、やっぱり周りには人がいるのに
隼人は腕の力を弱めるどころか、強められた。
「恥ずかしいってば――…」
「雛が悪いの」
なんだか今日の隼人は、いつもと違う気がする。
甘えん坊……というか、何時ものしっかり者の隼人じゃない。



