―――ガチャ…



無意識のうちにそれを掴んでしまって、一瞬の痛みで慌てて放した。


指先からポタッ…と流れ落ちる赤い液体。



「……いたい」


それは紛れもなく、血というもの。



「雛…!!触っちゃダメよ」


私の血を見たお母さんは、慌ててティシュで傷口を押さえた。



「だって、アスちゃんの………」


「いいのよ、わかったから」


「だめ、大切なものなんだもん」






目の前にある無残にも、粉々になってしまったマグカップ。


その欠片を一つ一つ拾い集める。


零れたコーヒーに波紋が広がり始めた…。



私…、なに泣いてるの?