「あたしだって今日知ったんだよ…。町でお母さんを見かけたから声掛けようとしただけなのに…。
見ちゃったんだ。
昔より少しだけ白髪が増えた…、だけど優しい顔は変わらないお父さんの姿を……」
私の胸の中で、言葉に詰まりながらその話の信憑性を高めるアスちゃん。
やめて……、これ以上言わないで。
耳を塞いでしまいたい。
お父さんがいなくなって、バラバラになってしまった我が家。
この話を聞いたら、もっと……修復の出来ないところまで行っちゃいそうで怖かった。
ふと、真っ暗な部屋に明かりが入ってきたと思ったら、半開きのドアの奥に見えた真菜ちゃん。
口元を両手で覆って、大きく開けた目からは沢山の涙が溢れていた。
そうだよね……、真菜ちゃんは知ってるんだ。
アスちゃんがどれだけ辛かったのかを。



