麻耶は、本当に縛睡していて、起きる気配がない。
かといって、一人でこうしているのは暇だし……、麻耶を起こすのもかわいそうだし……、というか、きっと起きないし。
帰るなんて事したら、麻耶はスッゴク機嫌悪くなっちゃいそう……。
そうなると、しばらく口きいてくれないからなぁ~…。
私は、部屋の真ん中にある小さなテーブルの横にあるソファーに腰掛けた。
ポワン…と弾む気持ちのいいソファー。
麻耶のお気に入りのハートのクッションを手に取り、抱きしめた。
麻耶が愛用している、甘すぎない香水の香りがふんわり香ってきた。
クッションに顔を埋めながら、麻耶の部屋を一望する。
シンプルに黄色でまとめられた部屋は、麻耶にはピッタリ。
麻耶の笑顔は、明るいから黄色を見たら麻耶を思いだすんだ。
そんな中に、木の写真たてにはいっている一枚の写真が目に入った。
もう、何度も見たこの写真。
いつか、この写真の事を聞いたことがあったっけ?
そして、麻耶はその写真の事を教えてくれたんだった。
それ以来、私がその写真の事に触れた事は一度もない。
これからだって、そうしていくつもり。
だって、麻耶の辛そうな顔は見たくないから。
写真の中の麻耶は、今までに見た事ないくらいキラキラした穏やかで幸せそうな笑顔だった。
つよくんにも、他の友達にも話した事がないその話の中の人の事。
私が聞きたいって言ったから、麻耶は無理して明るくしながら話したんだった……。
大好きだった元カレの事…。
もう死んでしまった人の事を………。



