その瞬間、隼人はこちらに向かって走り出した。 たった10mぐらいの距離が、永遠に感じられた。 隼人が、足を踏み出すたびに巻き上がる砂が、夕日に照らされてキラキラして見える。 どんどん隼人との距離が縮まっていって…… とうとう私の前でとまった。 今度は良く見える隼人の表情。 眉毛を少したらして、困ったような顔をしている。 私はというと、何を言ったらいいのか分からなくて、口を開く事が出来ない。 隼人も同じなようで、口を開かずに私の目をじっと見ている。 ………二人の間を、海風が通った。