距離を置きたいのに天然の生殺しにあい、逆らうなんて出来るわけもなく。




言われるがまま相沢の隣に座る。




「今日は体調どう?昨日すごく悪そうだったから...。それに、今日も元気ないんじゃない?」





そうだよ、今日の俺はショック受けて落ち込んでるんだよ。





「久柳、もしかしたら今日は学校休むかもと思ったんだけど、一応作ってきて良かった。...これ、体に良いものばっかりにしたから。」





そう言って俺に弁当を差し出す。



今日はやけに優しいな。


いつもは俺のこと、何も関心なさそうなのに。




差し出された弁当は、いつも相沢が使っている小さな弁当箱ではなく、大きめの、男が使うようなサイズの弁当箱。




そのことが、本当に俺のために作ってきてくれたんだなと思わせる。



「久柳、外食多いでしょう?昨日の体調不良は栄養の偏りが原因じゃないかと思って。久柳お肉ばっかり食べてるから。だから今日は野菜中心で、栄養もバランス良く心がけた。肉食の久柳の口に合うかはわからないけど...。」




そう言って少し遠慮がちに出された弁当は、いかにも無添加って感じで、体に優しそうで、彩りも良くて、何より美味しそうだった。





....そんな遠慮がちに出さなくても。



お前の作るご飯が美味しいとか、そんなこと俺が一番よく分かってるよ。




一流のシャフが作る料理ばかり食べてた俺に、家庭の味を教えてくれたのは相沢だ。






好きな子の作るご飯が美味しいとか、お前が俺に教えたんだろ。





「....ありがとう。いただきます。」




嬉しい気持ちを隠しながら少し素っ気なくしてみる。



「……どう?美味しくない?」



いつも無愛想な相沢が心配そうに見つめてくるのがおかしくて、ついニヤけそうになるのを必死に抑える。






……あぁ、くそ。前言撤回。



今日は元気ないなんてもう言えないくらい、俺は舞い上がってる。




こいつの言動や行動ひとつですぐに元気になれる。





「美味いよ。分かりきってるけど。お前が作る料理を残したことなんてないだろ。」





なんて、俺ばっかり振り回されてるのが悔しくて、



少し褒めてやれば照れるかな、なんて思ったけど。






それを聞いて嬉しそうに微笑みながら



「いつもご飯ご馳走してくれてありがとう。少しでも恩返ししたくて。」






なんて言う相沢に、俺はまた打ちのめされた。