降り続ける雨の雫が、傷に染み込み体中がヒリヒリと痛む。
少し動いただけても激しい痛みが体を襲った。
「くっ……」
マッドネスウルフの目が、今度は紫色に光る。
ここまで魔力が高い魔物がこの草原にいたのは予想外だった。
動けなくなるほど傷を負ったのも予想外だった。
マッドネスウルフの目の光が強くなり、頭の上に黒い闇が渦巻き出す。
あんなの初めて見たが、1発で殺られることは容易に予想がついた。
こんなところで殺られるわかけにはいかない…!
私は無理やり体を動かし、片膝をついたまま剣を構える。
しかしさっきまで紫色に光っていたはずの剣は光を失っていた。
いつの間にか闇の渦はマッドネスウルフを飲み込むくらい大きくなっていた。
あんなの、剣一本で止められない…。
私は強く唇をかんだ。
でもこの場にサキやフィーレ、双子がいなくてよかった。
もしかしたらあの渦に巻き込まれていたかもしれない。
《 グワァァァッ 》
マッドネスウルフがそう叫んだかと思ったら、闇の渦がものすごいスピードで飛んできた。
もう、ダメだ__________
私は少しだけ、死を悟った。



