「じゃ、討伐も終わったことだしもう帰ろっか!」


「サキ!討伐したの、私たちだからね!」


「せやせや!ルイの言う通りや!」


……何かを感じる。


何かが息をしている音が聞こえる。


みんなが愛馬の元へ戻る中、私は足を止め振り返った。


サァッと風が吹き、草を揺らす。


その時、草むらの中をサッと黒い影が揺らめいた。


「っ、みんな!かまえろ!」


私は咄嗟にさやから剣を抜き、両手で剣先と柄を持った。


ガキンッ_________


耳に響くような金属音が響く。


「な…!?マッドネスウルフ!?


どうして?全部討伐したはずじゃ…」


サキの悲痛な叫びに似た声が聞こえたが、今はそれどころじゃない。


なんせ目の前に私の何十倍もデカい魔物がいるから。


「ぅおらぁっ!」


私は力任せに魔物を弾きかえす。


「コイツ、ただのマッドネスウルフじゃない!


さっきのなんかより、何十倍もデカいし魔力がハンパじゃねぇ!」


思わず言葉遣いが荒くなってしまう。


「もう、なんなのよ!」


走ってこっちに戻ってきた双子が、再び草原に手をかざし、草を操り始める。


しかし、きつくマッドネスウルフに縛りついたと思った草は、鋭い歯で食いちぎられてしまった。


「えー!なんで破っちゃうの!?


これじゃ戦えない!」


ルイが頭に手を当て叫ぶ。


「ルイメイ!短剣を持って馬を守れ!


馬がいないと帰れないから重要な役割だぞ!」


「わ、わかりました!」


そう返事をして、双子は短剣を取り出して馬の元へ戻っていった。


「ナギサ!どないしよう!


あたいの合気道もきかんみたいや!」


フィーレが眉を八の字にしながら、気を放つ。


しかしマッドネスウルフはビクともせず、ジッとこちらを見据えたままだ。


「フィーレも双子と一緒に馬を守れ!


双子が短剣を持っている。何かあったらそれに頼れ!」


私の言葉に無言で頷くと、フィーレは慌てて双子の元へ行った。