「……いひゃい」

この痛みは、夢じゃない。

つねっていた頬を離した感触もするし。

「……めちゃめちゃ、痛い」

試しに腕をつねってみたけど、信じられない位痛い。


……うむ。

現実か確認する時は加減をしないと後がツライ。


じんじんと痛む右腕を擦りながら、ベッドを降りた。

ケントの家の一室であることには変わりはないのだが、内心面の変化が凄すぎてついていけない。


え、え、何?

鈴木くんに告白され、断って、ケントに告白した。

何それ、リア充の日常ですか?


昨日の私だよ!!


ついこないだまで『ハァハァ、ユウヒ様可愛いよ!!ペロペロしたいよ!!』と言いながら転がり回っていた私が。

人様に好意を抱かれるなんて、恐れ多い。


昨日は仰天のあまり、冷静になってたけど、今思い返せば、ヤバくね?

ちょー、ヤバイ。


言っちゃったよ。

告っちゃったよ。


ゲームの中だけでしか告白したことのない私が、リア充戦士ケントに告白したよ。


そもそも、アレを告白と呼ぶか否かはどうだって良い。

好きだと言ってしまったことには変わりがないのだから。


…………あれ?


そういえば、好きだって言ったけど、ケントから返事は返ってきたっけ?


いや、返ってきてない。

『俺も、好きだよ』

みたいな甘い言葉どころか、

『え、無理。何言ってるの?』

みたいな蔑む言葉もない。


あれ?
落ち着いて考えてみたら、これって緊急事態じゃない?


「うわー!どうしよう、どうしよう。これからケントとどう接すれば……」

「心中ご察ししますが、本日は登校日ですよ」


「………………」


振り返れば、扉の前に執事さんが立っていた。

さっき見た時にはいなかったし、誰かが出入りする音も聞いてないのに。

いつの間に入った。


「かれこれ三十分ですかね」


うむ。

宮崎家の人間は、私の思考を読み取る能力でもあるのだろうか。