オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww

ーーいた。


「お口に合いましたでしょうか、お嬢様」


二人で使ってたとは思えない位長い机の一面に広がる、皿、皿、皿。

初めて振る舞ったお母さんの料理の何百倍も豪勢だ。


私の隣にケント。

前にはお母さんと宮崎さんと、座る位置は変わらないが後ろにシェフさんがいる。

執事さんみたいな黒スーツに身を包んで、彫刻みたいな笑顔をつけている。

長髪だから女性かと思ったけど、声だと男の人に思える。


「え、あ、はい。美味しいです」

まさか、緊張しすぎて味が分からないです、なんて言えない。


実際にはほとんど食べてない。

だって、このドレッシングのかかった小さな球状のモノのどこから食べていけばいいの?

ヘルプ!と、隣のケントを盗み見る。

これが普通なのか、ケントは食べ方の分からない美しい料理をナイフとフォークで食べている。


ううー、ちょっと待って。

全然分からない。


この玉のどこに、ナイフを刺せば、良いのよ!っと!


べちゃ。


「あ」


ナイフから逃れたそいつはくるん、と宙を回って後ろへ飛んだ。

そして、素敵な音色を奏でる。


私の斜め後ろへ飛んだってことは、そこに佇んでいる人にぶつかった訳で……。

ざあっと嫌な汗が背中を垂れた。


ギ、ギギギ……と振り向くだけで機械音のする首を酷使して、ヤツの行方を追った。


「ふむ」


ヤツはシェフさんの胸元に命中していた。


「…………!!」

もはや、衝撃過ぎて何の言葉も出ない。

あああああ。

お母さんの大好きな宮崎さんのシェフさんの作った料理を彼自身にぶつけてしまった。

失礼だ。

最低だ。

よし、自害しよう。


意を決して刀を探しに立ち上がった(超絶混乱中)瞬間、シェフさんは言い放った。


「確かに。美味しいですね」


そして、弾けとんで顔に飛散した一部を舐め取って、シェフさんは微笑んだ。

な、んっと大人対応。

ようやく頭も動き始めて「すいません!すいません!」と平謝りするが、シェフさんに笑顔で流された。


あああああ!死にたい!!


半ベソかきながらわたわたしてると、シェフさんはあっという間に片付けて今度は食べやすそうなサラダを出してくれた。

お腹を気遣う挙げ句に、食べやすさを考えてくれるなんてもう、申し訳なくて禿げそう。


「まあ、よくあることだから気にしないでね」

と、宮崎さん。

いつもの冷静に穏やかな笑みを浮かべている。


ああ……癒される。


「そうねー」

と、お母さん。

同じく一般庶民なのにヤツを綺麗に平らげている。

むう。年の功だ。


「ルルちゃんはおっちょこちょいだな」

と、ケント。

最近無視していたから、外用のスマイルに会うのも久しぶりだ。


だから、だ。

少し頬が熱くなったのは断じて嬉しいからじゃない。