ゆるりと垂れた目尻に、ぽってりとした唇、目元のホクロ、栗色の猫っ毛、しゅっとした輪郭。

鈴木くんの全てに視線を滑らせて、手を動かしていく。

鈴木くんを私の絵の中に写し描けば描く程、じわじわと疑問が沸き上がってくる。


それは、何か……描き終えて分かった。


鈴木くんは、“君ノ側ニ、イタイ”に出ていた主人公に似ている。

というか、瓜二つと言っても過言ではない。

鈴木くんがあのキャラを模倣しているのか、それとも鈴木くんがモデルなのか。

恐らく、前者でコスプレの一種なのだろう。


「出来ました、鈴木くんです」

「……僕、ですか?」

絵を持ち上げて、自身の頬を撫でた。

そして、その頬はみるみる赤く染まっていった。

「何でも良いと言ってましたし、こないだは私を描いてくれましたし。お返しって訳ではないんですけども……」

弁解に似た言葉が、口からつらつらと出てくる。


「星野さんの眼には、僕がこんなにもキラキラに写ってるんですか?」

「そう、ですね」

「そう、ですか」

鈴木くんは軽く頷くと、笑顔を見せた。

八重歯が覗いて、光る。


嬉しいです、と鈴木くんは苦笑してから絵を撫でた。

その仕草に、少し胸が痛くなった。

だって、まるで子供を撫でるみたいに優しい眼で温かく撫でるものだから。


「くれますか?」

「こんな物で良ければ……」

「星野さんのだから欲しいんですよ」