昨日の続きの絵を広げながら、作業に没頭していると熱い視線を感じて顔をあげた。


鈴木くんがじーっと、私の手元を見ていたのだ。


「星野さんって見た目と違って、力強い絵を描くんですね。線が太くて、迫力があります」

「……どうも」

自分でも思う。

私の絵は、線が太くて多いから、激しい印象を与える。


鈴木くんの絵を少女漫画とするなら、私の絵は少年漫画、青年漫画に近いのかもしれない。


「僕、そういう絵柄を目指してるんです」

「私は自分のよりも、鈴木くんの絵柄が好きですよ」

細いタッチで柔らかい。

お花とか、お人形とかふわふわしたイメージの物を描くとよく似合う。


そう、初めてこの部室に来た時に見た本のイラストのような、淡く柔らかな。


「あ、ありがとう、ございます……」

ゴニョゴニョと語尾を弱めて、鈴木くんは俯いた。

同時に耳からしゅーっと湯気が出る。


えっと、これは、やらかした?


「あの、不躾なんですけど、何か絵を描いてくれませんか?」

やらかしては、なかったみたいだ。

鈴木くんは、私の眼を真っ直ぐ捉えて、訴えた。

「どういう系統ですか?」

「星野さんの趣味で良いですよ」

私の趣味なら、完璧乙女ゲームに走ってしまうからそれは流石にやめとこう。

ここは、無難に……似顔絵でも描こう。


鈴木くんが私を描いてくれたように。