どうやら、俺の妹となる女はキチガイらしい。

発狂したり、跨がってきたり、突然気を失ったり、それはもう異常を期しているがそんなこたぁどうだって良い。


そんなモノは俺の知識で何とか対処出来なくもないからな。


しかし、その、なんだ。

星野ルルが好きだと言う乙女ゲームってモノだけは理解が出来ない。


乙女ゲームというタイトルとは裏腹に登場人物は男ばかりだ。

それも頭やら腰やらどこかしらに手を当てている、病気がちな男共。

見ている星野ルルは鼻息荒くして、これまた乙女と称すに相応しくない。


何が目的で、何を得れるのか検討つかないが、星野ルルはコレに命をかけている口振りだった。


俺には趣味も特技もないから、何か一つに熱を入れれるのは正直憧れる。

……が、本音を言ってしまうと調子に乗りそうなヤツだから、敢えて口をつぐもう。


「乙女ゲーム、か」


ぶっ倒れて尚、しかめっ面をしている星野ルルを一瞥してから、棚から一つのゲーム容器を取り出した。

一見文庫本に見間違えるサイズだが、中にはCDを縮小したようなカセットが入っている。


私のモノに触るな、とでも言いそうだが気付かれなきゃ問題ないだろう。

と、説明書を取り出した。


“ーー貴女は忘れ去りし都市シュバルツの田舎に住む、パン屋の娘”


1ページ目を開いて、即効体力が抉り取られた気がする。

おいおい、早速設定がぶっ飛んでやがるぜ。


シュバルツと聞いて思い出すのはドイツのビールだけだ。

確か、ドイツ語で黒という意味があったはずだが、勿論都市名じゃない。

……深い意味はなく、響きで名付けられたのだろう。


“家の経営が傾き、貴女は王都に奉公する事となった”


「つまり侍女ってことか」


“そこで出会うのは、七人の王子と個性豊かな従者達”

“家の為にと懸命になる貴女に、彼らは徐々に引かれていくーー”


つまり、何だ。

貴女……仮に星野ルルとしよう。

星野ルルが七人の王子プラス従者達に好かれるというストーリーなのか?


理解した、が。これを楽しんで投資する意味が分からない。

もしかしたら、キャラクターが魅力的なのかもしれないな。


と、次のページを開いて吹いた。