「もっちろん!」

アリスは満面の笑みでグーサインをくれた。


部活、かあ。

協調性を必要とするのなら、アリスに迷惑をかけてしまうかもしれない。


アリスの友達として見学に行くんだから、ちゃんとしないとね。

と、しゃんと背筋を伸ばして前を見た。


「ほえ?」

決定事項、と大きく書かれた文字の横には、私を震撼させる言葉があった。

いや、見間違いだ。

目を閉じれば消えている筈……って、消えてない。


「このクラスで学校祭を迎えるのもこれが最後だから、今年は“全員参加”で頑張ろうね!」

鼻息を荒くしながら、祭りが大好きな緑川さんは黒板を叩いた。


“全員参加”……って、何でこんな拷問を受けなきゃならないんだ。


確かに一、二年と同じクラスで三年生からは進路ごとにクラス替えが行われるけど、学校祭自体は来年もある。

来年私と違うクラスになったら、頑張ってください。


うう……っ、ケントと住む事になったり、学校祭が全員参加だったり、私はいくつ罰を与えられなくちゃいけないの。

何も、悪いことしてないのに。


でも、クラスの皆はヤル気モードになっていてもう、それだけでツライ。


学校なんて燃えてしまえば良いのに。


「まあまあ、私達は部活に参加しますから出れませんって言えば何とかなると思うよ」

アリスは私の表情を読み取って肩を叩いた。

その励ましは緊張しきった顔を和らげさせてくれた。

「う、うん。ありがと」

「何とかなるよ、大丈夫」

「……だと良いなあ」


学校祭の内容がクラスのあちこちで飛び交う中、私だけはただただこの時間が終われと願っていた。

クラスの調和を乱す最低な奴でも良い。

逃げ出したかった。