「今日から、学校祭準備解禁でーっす」


LHR、クラス委員長の緑川さんが言った言葉に目を丸くしてしまった。

また、この季節が来たのか……


私の寿命削り取る、協調性が重要となるイベントが。


「あからさまに嫌な顔しないの」

前に座るアリスが振り向いて笑った。

「うぅー、うめ……アリスだって嫌じゃないの?」

「何だかんだ流されてれば、終わるからねー。ちょっとの辛抱」

その辛抱が出来ないのが私、星野ルルなのです。


面倒な作業ゲーの時とかは、迷わずに飛ばしてしまう。

例え、その遠くの未来が輝かしくても、近くの僅かな光の方がよっぽど良いのだ。


ということで、学校祭休みたい。

一日中ゲームしてウハウハしていたい。


「去年みたいに、影になって過ごそうね。絶対だよ」

「んー、そうしたいところだけど……」

アリスは目を細めて、意味ありげな表情を見せた。

そして、先生の目を気にしながら、隠れて携帯を取り出した。


「今年は、部活に入ったから……」


見せられた画面には、コスプレをした女の子が四人写っていた。


皆それぞれ好きなアニメのキャラを模倣しているのだろう。


足首のまで伸びるツインテールや、赤い髪など、各々好きな格好をしている彼女達はイキイキとした笑顔を見せている。


端っこで斜に構えるアリス以外も、素人目でも完成度が高い。


「コスプレ部なんてあったの?」

「そんな感じ、かな。創作活動部っていうの。表立った活動はしてないんだけど、部費を貰うために今年の学祭は頑張らないといけないんだ」


知らなかった。

お互い、何でも知ってると思っていたのに。


アリスの笑顔が見れて嬉しい様で、遠くに行ってしまう様な悲しさを覚えた。


「そっか。何するの?」

「うーん、レイヤーが四人だからコスプレ喫茶かな?」

「他にも部員がいるんだ」

「うん、絵描きさんとか、歌い手志望さんとか……全部で七人いるの」

「……へー、すっごい」

「そうだ!ルルも入ろうよ!そうしたら、クラスそっちのけになれるよ!」

「あ、いや……」


クラスを抜け出したいんじゃなくて、学校祭ムードから出ていきたいんだ。

だから、出来るなら早く家に帰りたい。


……いや、家に早く帰ればケントと顔を合わせる時間が長くなる。

絶交すると決めたんだから、私だって行動で示さないと。


「うん。見学に行ってみても良いかな?」