ーー家族が増えて一週間目。
「ただいま」
靴を脱ぐ片手間に言うと、今日はお母さんの声が聞こえなかった。
今日はパートの日なんだ。
「はあ……あっつ」
ブラウスをぽすぽす仰いで汗を拭う。
今日は“花咲く、プリンス物語”が地上波で流れると聞いて、大急ぎで帰ってきたのだ。
乙女ゲームモノは大抵深夜に流れるのが定番だが、午後五時から三分間だけ放映するのだ。
ふふふ、私は今日の為に生きてきたと言っても過言ではない。
「ただいま、ユウヒ様!」
勢いよくテレビを付けて、チャンネルを探す。
確か、フジラテレビだったはず……
「ない」
うそ、だ。
戦慄する私の面前を流れていくのは、高校球児のけたたましい声と白熱する試合。
野球は九回戦って聞いていたのに、十一回までやるっておかしくないか?
お陰様で三分アニメは、延長している。
いや、まだ延長しているだけなら良いんだ。
放映されないという事態にならなきゃ、良いんだよ。
ルールも何も知らない競技の終わりをまだかまだかと街続けていた最中に、誰かが帰って来た。
「……ただいま」
「おかえり、ついでにこの試合終わらせてきて」
「は?意味分からねぇ」
ケントは首を傾げて、私の部屋に鞄をぶん投げた。
まあ、確かに突然こんな事を言われたら引くよな。
「で、この試合ってなんだよ」
「アンタも見るの?」
ケントは制服のネクタイを緩めながら、私の隣に座った。
何だ。この試合を終わらせて欲しいだけで、見守って欲しいなんて思ってないんだけど。
「他にやる事ねーしな」
「暇人だな」
「お前に一番言われたくない台詞だ、阿呆」
ぺちんと、デコピンを受けた。
「くそっ、いたいけな女子高生の額に触れるなんて、セクハラで訴えるぞ」
「お前に触れただけでセクハラなら、俺は毎日がセクハラだ」
ああ、確かに。
ケントはいつも女の子に囲まれている。
こないだ廊下ですれ違った時も、裏庭を覗き見た時も、職員室で話してる時も、常に誰かしら女の子の姿があった。
ただ隣を歩いているだけの時もあれば、腕を組んでいる時もあった。
「モテ自慢か、死んでしまえ」
「僻みか、うるせーよ。この下僕」
「ぐ」
流し目で私を見るケントを睨んだ。
ああ、これを言われたら何も反論できない。
結局一週間かけても、コイツの弱味という弱味は握れなかった。
学校でのケントは秀才で先生からも、コイツに頼めばなんとかなると一目置かれている存在だ。
先生から直々に、生徒会に立候補して欲しいと言われて今の文化委員長という席に収まっているらしい。
何やら先生方は、是非とも生徒会長になって欲しかったらしい。
私には全く理解出来ない別世界のお話だ。
少し尾行してみたけど、一日で四回は告白されていた。
はい、モテ主人公ボーイ乙。
「つーか、俺を見るよりもやる事あんじゃねーの?」
ああ、つい睨んでしまっていた。
ケントが指差した先のテレビはまだ、野球をやっている。
そして、その画面の上には。
「うそ」
「ただいま」
靴を脱ぐ片手間に言うと、今日はお母さんの声が聞こえなかった。
今日はパートの日なんだ。
「はあ……あっつ」
ブラウスをぽすぽす仰いで汗を拭う。
今日は“花咲く、プリンス物語”が地上波で流れると聞いて、大急ぎで帰ってきたのだ。
乙女ゲームモノは大抵深夜に流れるのが定番だが、午後五時から三分間だけ放映するのだ。
ふふふ、私は今日の為に生きてきたと言っても過言ではない。
「ただいま、ユウヒ様!」
勢いよくテレビを付けて、チャンネルを探す。
確か、フジラテレビだったはず……
「ない」
うそ、だ。
戦慄する私の面前を流れていくのは、高校球児のけたたましい声と白熱する試合。
野球は九回戦って聞いていたのに、十一回までやるっておかしくないか?
お陰様で三分アニメは、延長している。
いや、まだ延長しているだけなら良いんだ。
放映されないという事態にならなきゃ、良いんだよ。
ルールも何も知らない競技の終わりをまだかまだかと街続けていた最中に、誰かが帰って来た。
「……ただいま」
「おかえり、ついでにこの試合終わらせてきて」
「は?意味分からねぇ」
ケントは首を傾げて、私の部屋に鞄をぶん投げた。
まあ、確かに突然こんな事を言われたら引くよな。
「で、この試合ってなんだよ」
「アンタも見るの?」
ケントは制服のネクタイを緩めながら、私の隣に座った。
何だ。この試合を終わらせて欲しいだけで、見守って欲しいなんて思ってないんだけど。
「他にやる事ねーしな」
「暇人だな」
「お前に一番言われたくない台詞だ、阿呆」
ぺちんと、デコピンを受けた。
「くそっ、いたいけな女子高生の額に触れるなんて、セクハラで訴えるぞ」
「お前に触れただけでセクハラなら、俺は毎日がセクハラだ」
ああ、確かに。
ケントはいつも女の子に囲まれている。
こないだ廊下ですれ違った時も、裏庭を覗き見た時も、職員室で話してる時も、常に誰かしら女の子の姿があった。
ただ隣を歩いているだけの時もあれば、腕を組んでいる時もあった。
「モテ自慢か、死んでしまえ」
「僻みか、うるせーよ。この下僕」
「ぐ」
流し目で私を見るケントを睨んだ。
ああ、これを言われたら何も反論できない。
結局一週間かけても、コイツの弱味という弱味は握れなかった。
学校でのケントは秀才で先生からも、コイツに頼めばなんとかなると一目置かれている存在だ。
先生から直々に、生徒会に立候補して欲しいと言われて今の文化委員長という席に収まっているらしい。
何やら先生方は、是非とも生徒会長になって欲しかったらしい。
私には全く理解出来ない別世界のお話だ。
少し尾行してみたけど、一日で四回は告白されていた。
はい、モテ主人公ボーイ乙。
「つーか、俺を見るよりもやる事あんじゃねーの?」
ああ、つい睨んでしまっていた。
ケントが指差した先のテレビはまだ、野球をやっている。
そして、その画面の上には。
「うそ」

