ーーピピピピピピピ。

電子音の目覚ましを止めて目を開けた。


「おはよ。ユウヒ様」


朝起きて、一番に目が合うのはユウヒ様だ。

どうしても一番に見たかったから、ベッドの真上の天井にユウヒ様等身大ポスターを貼り付けた。

これで夢の中でも起きても一緒だ。


にひひひひ、幸せだなぁ。


「……朝っぱらから不快な音を出してんじゃねーよ」

低いガラガラな声が少し下から聞こえた。

私の声でケントも起きた様だ。


「うっわ、朝っぱらから不快な顔を見た」

「こっちだって見たくも、見せたくもねーよ」


いつものお坊っちゃまヘアースタイルは何処へ行ったのか。

前髪は跳ね上がって、まるでサイ○人みたいだ。


あ、昨日の私みたい。


ーーカシャッ。


「ばっ、何撮ってんだよ」

「ほら」

思わず撮ってしまった写真をケントに見せた。

「昨日の私よりもサイヤ○だよ」

「……本当だな。ばっかみてー」


睨んでいたはずなのに、ふっと柔らかい表情を見せた。

……のは一瞬で、すぐに鋭い視線を投げつけてくる。

山の天気か、お前は。


「それ、消せよ。お前の携帯に俺がいるなんて気持ち悪ぃ」

「私の事を撮った身分でよく言うな」

「……あん?」

「何でもありません」

すぐさま携帯を弄って写真を消した……フリをして速攻保存した。

これはケントの弱味に違いない。


きっと、純粋にケントの上っ面を好いている女の子達はこれを見たら、嫌うだろう。


ざまーみろ。


そういや、私の写真は消したのかな?

……消しただろうな。今の反応から見ると。

残念だ。面白いからお母さんに見せようと思ったのに。


「ふあ」

アクビを漏らしながら部屋を出たら、朝ごはんの良い匂いがした。

お母さんったら、鼻歌まじりにご飯を作っている。

こんなにも陽気なお母さんを見たのはいつぶりだろう。


「おはよ、お母さん」

「あら、おはよう。早いのね」

「まだ慣れてないから、寝付きが悪いのかも」

「あらー。この家に住んでるルルが寝付けないのなら、ケント君は大丈夫かしら?」

お母さんは焼き上がった魚を皿に盛り付けている。

「そんな素振りはなかったけど。今日で三日目だし、慣れたんじゃない?」

「なら良いけど」

お母さんは少し不安そうな表情をした。


問題ないのに。

ケントなら神経が図太そうだから、私の部屋でもぐっすり寝れてるだろう。


「おはようございます」

「あらっ。ケント君、おはよう」

ボサボサ頭は、既に通常運転に戻っている。

こんな短時間に直せるなんて、どれだけハイスペックになれば気がすむんだ気が済むんだ。

「おはよう、お兄ちゃん」


「…………おはよう」


不意をつけた、と思う。

わざとらしく呼んでやれば、ケントは明らかに不穏な表情を見せたから。

演技しろって言ったのはケントなのに、自身からボロを出すのか。

ふはは、バレて慌てふためくケントを想像しただけで、面白い。